
DEIM2025参加レポート:内定者のエンジニアが初めての学会で得た学びと刺激
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こんにちは、株式会社プレイドで内定者アルバイトとしてCore Platform Team でプラットフォームエンジニアをしている小林と申します。プレイドには今春新卒として入社予定です。
今回は福岡で実施された第17回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム DEIM2025 に参加しましたので、その内容をレポートします!
プレイドは日本データベース学会(DBSJ)に入会しました
今年から株式会社プレイドは、データベースやデータ工学分野における最新の研究動向の把握やコミュニティへの貢献を目的に、日本データベース学会(DBSJ)に維持会員として入会しました。
その活動の一環として、DBSJが主催する「第17回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2025)」に本年ゴールドスポンサーとして参加し、ブースの出展・技術報告に加え、論文の発表を行いました。
DEIMについて
DEIM は日本データベース学会・電子情報通信学会 データ工学研究専門委員会・情報処理学会 データベースシステム研究会が主催している、データ工学と情報マネジメントに関する研究発表や意見交換を目的とした学術集会です。今回は2月27日~3月1日がオンライン、3月3日と4日がオンサイトで福岡国際会議場での開催となりました。
技術広報活動
会社として学会に参加し、以下2つを実施しました。
- ブース出展
- 技術報告論文の執筆、発表と技術登壇
ブース出展
株式会社プレイドはDEIM2025に初めてゴールドスポンサーとして参加し、スポンサーブースを出展しました。ブースでは社員が弊社の主要プロジェクトであるKARTEや、用いられている技術の説明を行いました。データベースやビッグデータの分析に関連する研究を実施している研究者の方が多く参加されていたので、技術スタックや現状の課題、技術的に難易度の高い部分についてなど様々な質問をいただき、多くの学生や企業の方とお話することができました。また、弊社はロゴ入りのタンブラーやサウナハットなどのグッズと、事業内容とそこで利用している技術についてのパンフレットの配布も行いました。ブースを訪れてくださった皆さん、ありがとうございます!
技術報告論文の執筆、発表と技術登壇
「Blitz: データ強整合性を持つリアルタイムエンドユーザー解析エンジンBlitz: データ強整合性を持つリアルタイムエンドユーザー解析エンジン」と題し、メインのプロダクトであるKARTEで開発しているデータ解析基盤についての論文を投稿し発表を行いました。多くのお客様にご利用いただいているKARTEのサーバーは日中平均で秒間7万リクエスト、多いときには秒間13万のリクエストがあり、それぞれに対して強整合性を保ちつつリアルタイムで解析を行い、500ms 以下で結果を返却しています。このような高スループットと強整合性を実現し実際の環境で運用する難易度は高く、興味深い論文になっているのではないかと思います。また、「月間180PBのストリーム処理されたイベントデータを使用した, KARTEのリアルタイムインタラクションマネジメント」という題名で技術登壇も実施しました。こちらでもリアルタイム解析基盤についての紹介や、大規模データを扱うにあたっての工夫などを紹介しています。スライドも公開されているので、ご興味のある方はこちらもぜひご覧ください!
DEIMでは他にも技術報告を実施している企業が多くあり、企業ごとの独自の課題に対する様々なアプローチを見ることができとても魅力的でした。
参加した感想
私は学会に参加するのが初めてだったので、どんな雰囲気なのかと少し緊張しながら会場へ向かったのですが、会場では参加者同士の交流が盛んに行なわれており非常に楽しい時間を過ごすことができました。
ポスターセッションの時間は1時間半ごとに区切られているのですが、魅力的なポスターや元々興味を持っていた分野に関連するものなど心を惹かれる発表が多くあったため見て回ることに苦労しました。
LLMを活用した商品レビュー分析や分散データベースのトランザクションに関わる研究、さらにはデータサイエンスを活用し周期性を持った天体の周期分析に関わる研究など多様な研究分野の発表があり、初見では理解できないことが多かったのですが、専門外の私に対してどなたもわかりやすく説明してくださいました。学校や会社、年齢の垣根を超えて学術的な交流ができる学会という環境の素晴らしさを実感しました。
また、私は東京在住であり、大学も会社のオフィスも東京にあることから首都圏の学生との交流がどうしても大きな割合を占めてしまうのですが、今回の学会は福岡で開催されており関西や九州の学生の方々とお話することができたのも良かったです。今回はスポンサー企業所属としての参加でしたが、まだ大学にも在籍している学生なので学生目線で参加していた学生の方々とお話することができたかなと思います。
聞き切れていない発表も多くあるのですが、お話を伺ったなかで個人的に興味深かった研究をいくつかご紹介します。
部分ステートマシンレプリケーションにおける投機的分散トランザクション処理
https://pub.confit.atlas.jp/ja/event/deim2025/presentation/7C-03
白石 裕輝1、杉浦 健人2、石川 佳治2 (1. NTT、2. 名古屋大学)
NTTコンピュータ&データサイエンス研究所さんで行われている研究で、分散データベースのトランザクション処理を高速化する新たな手法を提案されています。分散データベースにおいてトランザクションを実施する際、既存のアプローチではトランザクション処理の順序や可否を分散して判定することで高速化を図っていますが、ロジックの実行がトランザクションのコミット後に行われるため複数のトランザクションが存在する場合ロジックの実行が遅延してしまいます。そこで、投機的に読み書きを行うことによってコミット前にロジックを実行し、実行遅延を軽減する手法を提案しています。
具体的な例を考えてみましょう。トランザクションAとBが存在する際に、既存手法ではAでの書き込みを待ってBでの読み取りを行いますが、Bで読み取る行にAによる更新が無い場合はこの待機時間は必要ありません。本手法では、コミット前に投機的な読み取りをし、読み取った後に更新が無い場合はこの待機を行わないという処理を行うことにより処理の高速化を行っているものと解釈しました。
プレイドでは MongoDB や Google Spanner といった分散データベースを積極的に活用しており、社内にはデータベースの内部構造に興味を持つ人も多くいます。こういった手法がデータベースに実装されていくことにより処理の高速化に繋がるので、基盤チームとしては見逃せない研究と言えます。
局所探索法を用いた実体化ビュー選択によるクエリワークロード処理の高速化
https://pub.confit.atlas.jp/ja/event/deim2025/presentation/3C-03
アンダーソン 圭那1、鬼塚 真1、佐々木 勇和1、Yohanes Yohanie Fridelin Panduman1 (1. 大阪大学)
大阪大学に在籍している方の研究で、クエリワークロードの高速化を行う際の実体化ビューの選択手法を提案されています。複雑なクエリワークロードを実行する際は実体化ビューを用いることによりクエリの高速化が可能となりますが、どの部分クエリを実体化するかという選択は実体化ビューの容量や更新処理のコストなど考慮するべき変数が多数あります。既存の手法では確率を用い実体化ビューを選択していますが、本手法では局所探索法を用いて解の探索を行うことで既存手法より効率の良い実体化クエリの選択を可能としています。
プレイドでは多くの行動データを日々解析しており、その活用の際にはクエリの実行時間が問題となってきます。データが多ければ活用の幅も広がりますが、実体化ビューなどを利用しないと実行時間もデータ量に比例して長くなっていってしまいます。このような手法を用いることによりクエリの高速化が実現できれば、データの利活用をより進めることができそうです。
偏向型テンソルストリームのための多方向特徴自動抽出とリアルタイムサイバー攻撃検出への応用
https://pub.confit.atlas.jp/ja/event/deim2025/presentation/4D-02
中村 航大1,3、川畑 光希1、田中 駿吾1,2、松原 靖子1、櫻井 保志1 (1. 大阪大学産業科学研究所、2. 大阪大学工学部電子情報工学科 、3. 大阪大学大学院情報科学研究科)
こちらも大阪大学に所属されている方の研究で、サーバーの通信ログなどから潜在的なパターンを抽出しサイバー攻撃を検知することを可能とする手法を提案しています。ログに含まれるポート番号などのカテゴリ属性と、時刻など連続的に変化する量的属性の両方をテンソルストリームとして扱い、一定時間ごとに傾向を分析することにより異常な活動を検知することができます。カテゴリ属性と量的属性を上手く扱い、さらに時系列パターン分析を用いることで既存の手法では検出が難しかった攻撃も異常として捉えることができるそうです。
KARTEでは様々なウェブサイトからの膨大な数のリクエストを処理しており、サイバー攻撃への対策は必須です。このような手法を取り入れることによって、今まで検知が難しかった攻撃を検知できるようになり、よりサイバー攻撃に強いサービスを作りあげることができるのではないかと考えています。
最後に
株式会社プレイドはDEIM2025に初めてゴールドスポンサーとして参加し、スポンサーブースを出展しました。
プレイドではデータベースやデータ解析といった分野と関わりが深いプロダクトの開発を行なっており、難易度の高い課題に取り組む機会が多くあります。DEIMにご興味のある方には、面白いと感じるポイントが多くあるのではないかと思います。プレイドの技術や、プレイドで働くことに興味を持たれた方は、是非以下のリンクを覗いてみてください。