npmのprivate registryからGitHub Packages Registryに移行する
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PLAIDでは社内のNode.jsパッケージの管理にnpm private registry(npmのregistryにprivateでパッケージをpublishする形式)を利用していました。
また、npm private registryを導入する以前の古いパッケージは、GitHubのプライベートリポジトリのURLをpackage.json
に指定しているパッケージも混在していました。
その中で、2019年5月にGitHub Packages Registryがベータ公開されました。
GitHubアカウントとの統合性、GitHubリポジトリとGitHub Actionsでの連携を考えて、
社内パッケージをGitHub Packages Registryへ移行することにしました。
移行中には、npm private registryとGitHub Packages Registryで同じscopeが同時に利用できない問題が見つかりました。(詳細は後述します)
そのため、最終的にはnpm private registryで管理していたパッケージもすべてGitHub Packages Registryへ移行することになりました。
この記事では、次の2種類のパッケージをそれぞれGitHub Packages Registryに移行するまでの流れを見ていきます。
- GitHubトークンを使ったGitHubプライベートリポジトリの読み込み から GitHub Packages Registry への移行
- npm private registry から GitHub Packages Registry への移行
この移行が終わったタイミングで、GitHubがnpmを買収することが発表され、将来的にnpm private registryはGitHub Packages Registryへと統合される予定です。
この移行の手順はこの発表以前の取り組みなので手作業な部分がありますが、今後はもっと楽に移行ができるようになるといいですね。
目的
目的としては次の2つのことがメインとなります。
- GitHubトークン(
x-oauth-basic
でのベーシック認証)を使ったGitHubプライベートリポジトリの読み込みをやめること - npmのアカウントとGitHubのアカウントが分断されているのをGitHubに統合する
GitHubトークン(x-oauth-basic
でのベーシック認証)を使ったGitHubプライベートリポジトリの読み込みをやめる
npmでは、package.json
にGitHubトークンを使ったベーシック認証(x-oauth-basic
)を利用することで、GitHubのプライベートリポジトリをパッケージとして参照できます。
package.json
:
"dependencies": {
"package-name": "git+https://<github_token>:x-oauth-basic@github.com/<user>/<repo>.git"
}
- https://docs.npmjs.com/files/package.json#github-urls
- node.js - How to use private Github repo as npm dependency - Stack Overflow
しかし、この方法はpackage.json
やpackage-lock.json
にリポジトリを読み書きできるGitHubトークンが記載されるためあまり良くない方法です。
ここで利用するGitHubトークンにはrepo
権限が必要ですが、repo
権限にはWriteも含まれます。
そのため、パッケージを参照するだけのトークンとしてGitHubトークンを利用するには過剰な権限が付与されてしまいます。
GitHub Packages RegistryからのインストールにもGitHubトークンが必要ですが、read:packages
のようにRead Onlyの権限が分離されています。
またこのリポジトリを使った方法は、リポジトリにビルド済みファイルもコミットしないといけないため、あまり扱いやすくはありません。
これらのgit+https://
で参照するパッケージを通常のnpmパッケージとして参照できるようにするため、
GitHub Packages Registryへ移行するのが目的の1つです。
npmのアカウントとGitHubのアカウントが分断されているのをGitHubに統合する
一部のパッケージはnpm private registryにpublishして利用していました。
npm private registryにはnpmのアカウントまたはnpmのトークンが必要になります。
社員はGitHubアカウントを持っていますが、npmのアカウントを持っていない人もいます。
(参照はread onlyのnpm tokenを利用する形をとっていました)
そのため、npm private registryを使うとnpmとGitHubアカウントの2重管理が必要になる問題があります。
これを解決するためにSSOがあるnpm | EnterpriseやJFrog Artifactoryを検討していました。
しかし、GitHubアカウントで扱えるGitHub Packages Registryが公開されました。
GitHub Packages Registryに寄せることでこの問題を解決するのも目的の1つです。
次の文章は社内のnpm registryとGitHub Package Registryを違いを簡単に調べたドキュメントからの引用です。
npm registryとGitHub Package Registryの違い
npm registryとは異なる部分として、パッケージを公開/インストールといった権限管理が、
GitHubのアカウントに紐付いて管理できます。
npm registryはnpmアカウントでのチーム管理が必要となり、GitHubアカウントと二重管理が発生します。また、npm registryはユーザー単位の課金に対して、GitHub Package Registryは転送量などの従量課金です。
(GitHubアカウント分の値段は別で必要なので、追加の部分が従量課金という意味)
そのため、GitHubアカウントを持っていてOrganizationに参加していれば、アカウントの制約はありません。
- npm registry: https://www.npmjs.com/products
- GitHub Package Registry: https://github.com/features/packages#pricing
また、GitHub Package Registryはnpm以外にもDockerやMavenなどにも対応しています。
npmのメリット
- デフォルトのregistryなので設定不要
npmのデメリット
- GitHubアカウントとは別にnpmアカウントの管理が必要
- CIからパッケージを公開するためのトークンを安全に管理するのが難しい
- Wombat Dressing Roomのような仕組みがないと共有トークンがひつようとなってしまいがちGitHub Package Registryのメリット
- GitHubアカウントに紐づく管理ができる
- GitHub Actionsではリポジトリに紐づく使い捨てのアクセストークンが発行できる
- CI(GitHub Actions)からのpublishするフローがとれるため、人に依存しないパッケージ管理がしやすい- npmパッケージ以外にも対応している
GitHub Package Registryのデメリット
- npm registryとは異なりデフォルトではない
npm
コマンド(クライアント)がnpm registryのみを想定しているため、意味不明なエラーメッセージに遭遇することがある
2020-03-18現在では、npmはGitHubに買収されたため、あえてnpm private registryを選ぶ理由は少なそうです。
移行の事前準備
まず最初にこの移行についてまとめるMeta Issueを社内のリポジトリに作成しました。
このような複数のリポジトリ、複数のチームにまたぐような問題はMeta Issueを作成してすすめるのがやりやすいように思えます。
移行対象の抽出
次に、移行対象となるパッケージ/リポジトリの一覧を作成しました。
詳細な手順は汎用性がないため省きますが、主に次のことをして移行対象のパッケージをまとめました。
- GitHub Organizationにあるすべてのリポジトリをcloneする
- cloneしたリポジトリのすべてのpackage.jsonからdependenciesを取りだす
- dependencies同士の依存ツリーを構築しJSONとして出力(再帰はない前提)
- 依存ツリーから、移行するべきパッケージ/リポジトリ(ライブラリ側)と移行後に参照(利用者側)を変更するリポジトリを一覧化
この下処理の分析作業は、分析用のリポジトリを使ってそこに色々なツールを書いていく形で進めました。
一覧自体はSpreadSheetに作っておき移行済みかを管理できるようにしてすすめました。
次のスライドが近いことをやっています。
移行の戦略
移行対象がわかったので、次に移行の戦略を立てる必要がありました。
ライブラリ自体は複数のリポジトリがありますが、KARTEではメインの開発リポジトリがmonorepoです。
そのため、利用側のリポジトリはmonorepoのみに注目しておけばよかったので、次の2段階で移行することにしました。
- ライブラリ側をGitHub Packages Registryにpublishする
- 利用側でGitHub Packages Registryにpublishしたパッケージを参照するように変更
Note: npmとGitHubの同名スコープ衝突の問題
最初はnpmの@plaidev
とGitHub Package Registryの@plaidev
は並行して利用する予定でした。
しかし、GitHub Packages Registryを使うと指定したスコープはnpm or GitHubどちらかしか参照できない問題があります。
つまり、npmに @plaidev
で公開してるパッケージ(OSSも含む)とGitHub Package Registryの@plaidev
のパッケージは同時には参照できないという問題があります。
たとえば、次のような.npmrc
を設定した場合に、npm registryの @plaidev
パッケージは参照できなくなります。
ただし、それ以外のスコープがついていないパッケージやその他の@scope
などのスコープのパッケージは参照できます。
.npmrc
:
registry="https://npm.pkg.github.com/plaidev"
そのため、次の2つのパッケージはどちらか片方のregistryしか参照できません。
- npm public/private registryの
@plaidev/foo
パッケージ - GitHub Package Registryの
@plaidev/bar
パッケージ
2020-03-18時点では、GitHub Package Registryはnpm registryに対してProxy的な挙動はしてくれません。
つまり@scope/pkgname
というパッケージがGitHub Package Registryに存在しない時、npm registryに対して@scope/pkgname
を探索してくれません。
VerdaccioにはUplinksという機能がありますが、
GitHub Package Registryにはこの機能がないため、npmとGitHubどちらかに集中管理する必要があります。
npmとGitHubの同名スコープ衝突の問題の解決策
最終的には、次のような形でこの問題を回避することにしました。
- OSSなnpm registryのパッケージは、GitHub ActionsでGitHub Package Registryにもpublishする
- Privateなnpm registryのパッケージは利用をやめ、すべてGitHub Package Registryに移行する
npm is joining GitHubではnpm private registryとGitHubの統合が発表されているため、将来はもっとうまく解決できることを期待します。
[ライブラリ側の移行手順] GitHub Action で GitHub Package Registryに登録する
移行対象のライブラリは、まだパッケージとしてpublishされていないGitHubリポジトリと既にnpm private registryにpublish済みのパッケージの2種類があります。
どちらもGitHub Package Registryにpublishしなおすだけなので、基本的な手順は変わりません。
注意点として、GitHub Package RegistryはOrganizationと同じscopeのパッケージしかpublishできません。
そのため、package.json
のname
がScope(@example/*
)を含んでいない場合はパッケージ名の変更も必要です。
GitHub Package Registryにパッケージをpublishする場合にはGitHub Actionsが便利です。
なぜならGitHub Actionsは、GITHUB_TOKEN
というリポジトリに紐づく特殊なトークンが実行ごとに発行されます。
このGITHUB_TOKEN
は、GitHub Packages Registryにpublishできるwrite:packages
の権限が含まれています。
そのため、GitHub ActionsからGitHub Package Registryへpublishを行えば、
手元にGitHubトークンがなくてもパッケージをpublishできます。
ライブラリのGitHub Package Registryへの移行に合わせて、GitHub Actionsからpublishの仕組みも作ることにしました。
具体的には、次のような手順でGitHub Actions(CI)からパッケージをpublishしています。
次の順番で説明していきます。
- CI(GitHub Actions)からpublishする設定
- CI設定済みパッケージのバージョン更新の流れ
CI(GitHub Actions)からpublishする設定
CI(GitHub Actions)からpublishするには、いくつかパッケージの設定とGitHub Actionsの設定が必要です。
次のようにGitHub Actionで GitHub Package Registry への publishフローを追加できます。
1. package.json
の<name>
を@scope/<name>
に変更
パッケージ名が @scope
のスコープになってない場合は変更が必要です。
GitHub Package Registryはスコープ(@scope/name
形式)のパッケージのみpublishできます。
例) example-one
- "name": "example-one",
+ "name": "@scope/example-one",
2. package.json
にpublishConfig
を追加する
package.json
にpublish先の情報を追加します。
publishConfig
には次のようにaccess: restricted
(private的な意味)、registry
にはGitHub Package Registryを指定します。
"publishConfig": {
"access": "restricted",
"registry": "https://npm.pkg.github.com/"
}
3. GitHub Action(publish.yml
)を追加する
CIからpublishするGitHub Actionのワークフローの定義ファイルを追加します。
.github/workflows/publish.yml
というファイルを追加します。
name: publish
env:
CI: true
# masterブランチにpushした時のみ実行するワークフロー
on:
push:
branches:
- master
tags:
- "!*"
jobs:
release:
name: Setup
runs-on: ubuntu-latest
steps:
- name: checkout
uses: actions/checkout@v1
- name: setup Node
uses: actions/setup-node@v1
with:
node-version: 12.x
registry-url: 'https://npm.pkg.github.com'
- name: install
run: npm install
- name: build
run: npm run build
# まだpublishされていないバージョンならpublishする
- name: publish
run: |
npx can-npm-publish --verbose && npm publish || echo "Does not publish"
env:
NODE_AUTH_TOKEN: ${{ secrets.GITHUB_TOKEN }}
# まだtagがないバージョンなら、Git Tagをpushする
- name: package-version-to-git-tag
uses: pkgdeps/action-package-version-to-git-tag@v1
with:
github_token: ${{ secrets.GITHUB_TOKEN }}
github_repo: ${{ github.repository }}
git_commit_sha: ${{ github.sha }}
git_tag_prefix: "v"
これ設定で、package.json
のversion
を更新すると、自動的にGitHub ActionsがGitHub Package Registryにパッケージをpublishしてくれます。
Notes: この手順は1リポジトリ1パッケージの移行手順です。
monorepoのライブラリについては別の方法を取る必要があります。
また、GitHub Packages Registryもmonorepoに対応していますが、各パッケージのpackage.json
にはrepository.directory
が必須です。
このフィールドを指定し忘れると全く関係ないように見えるエラーで失敗します。
Not Found - PUT https://npm.pkg.github.com/@scope/foo - The expected resource was not found.
詳細はGitHub Packagesのドキュメントに書かれています。
CI設定済みパッケージのバージョン更新の流れ
"CI(GitHub Actions)からpublishする設定"がされたリポジトリでは、
次のような流れでパッケージを公開/更新できます。
- [ローカル] パッケージのバージョンの更新:
npm version {patch,minor,major}
- [ローカル] リポジトリに変更をpush:
git push
- [CI] パッケージのpublishとgit tagのpush
1. [ローカル] パッケージバージョンの更新
npm-versionというnpm
のコマンドを使うことで、package.json
のversion
の更新が セマンティックバージョンで行えます。
それぞれアップデートしたいコマンドを叩くだけで、アップデートとコミットを一括で行います。
# patch アップデート (x.y.Z) バグ修正 0.0.1あがる
npm version patch
# minor アップデート (x.Y.z) 機能追加 0.1.0あがる
npm version minor
# major アップデート (X.y.z) 破壊的変更 1.0.0あがる
npm version major
2. [ローカル] リポジトリに変更をpush
GitHub ActionでのCIが走るブランチ(publish.yml
のon:
の項目、デフォルトはmaster
)に変更をpushしてください。
git push
3. [CI] パッケージのpublishとgit tagの追加
GitHub Actionでは次のことを行います。
- 該当バージョンがまだ公開されていないなら
npm publish
する - 該当バージョンのtagがGitHubリポジトリに貼られていないなら
git tag {version}
とgit push --tags
つまり、package.json
のversion
にあわせて、パッケージの公開とgit tagの設定します。
人間がやるのは package.json
のversion
の更新までにすることで、GitHub Tokenの設定せずにパッケージの公開ができます。
そのため、Pull Requestをマージするだけでパッケージの公開までできます。
package.json
のversion
が更新されていなければ、何もせずにCIは終了します。
Note: 基本的にはCIからpublishしますが、ローカルからでも各自のGitHubアカウントに紐づくトークンを使うことで手動のpublishも可能です。(βリリースをしたい場合など)
GitHub Package Registryにpublish済みパッケージの互換チェック
既存のライブラリは手動でnpm private registryにpublishされたものやそもそもただのGitHubリポジトリです。
そのため、GitHub Package RegistryにGitHub Actionsからpublishされたことでファイルが欠損したり、ビルド結果が変わってないかの互換性を確認する必要があります。
そのため、npmが内部的にパッケージを取得する際に利用するpacoteで変更前と変更後のパッケージをtarファイルとして取得し、実際に中身を比較するツールを書いてチェックしました。
依存するライブラリとtarファイルのdiffチェックにPkgDiffを使っています。
$ npm install execa pacote
$ brew install pkgdiff
check.js
:
const fs = require('fs');
const path = require('path');
const pacote = require('pacote');
const execa = require('execa');
// output tar files
const tarDir = path.join(__dirname, 'tar')
const getName = (item) => {
return typeof item === 'object' ? item.name : item
}
const getRegistry = (item) => {
return typeof item === 'object' ? item.registry : undefined
}
const getToken = (item) => {
return typeof item === 'object' ? item.token : undefined
}
/**
* 比較対象
* - name: 任意の名前
* - before: 移行前のパッケージ
* - after: 移行後のパッケージ
**/
const list = [
// git+https から GitHub Package Registryに移行したパッケージ
{
name: 'example-one',
before: 'git+https://<GITHUb_TOKEN>:x-oauth-basic@github.com/scope/example-one.git#v1.0.0',
after: {
name: '@scope/example-one',
registry: 'https://npm.pkg.github.com/scope',
// package:read権限のGitHub Package Registry Token
token: 'GITHUB_YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY'
}
},
// npm private registry から GitHub Package Registryに移行したパッケージ
{
name: 'example-two',
before: {
name: '@scope/example-two',
registry: 'https://registry.npmjs.org',
// npmのトークン
token: 'NPM_TOKEN_XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX'
},
after: {
name: '@scope/example-two',
registry: 'https://npm.pkg.github.com/scope',
// package:read権限のGitHub Package Registry Token
token: 'GITHUB_YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY'
}
}
];
/**
* list.jsに定義したパッケージの差分をチェックするスクリプト
* git:// と GitHub Package npm の差分を見る
*/
async function main() {
fs.mkdirSync(tarDir);
for (const item of list) {
const beforeFilePath = path.join(tarDir, `${item.name}-before.tar.gz`)
const afterFilePath = path.join(tarDir, `${item.name}-after.tar.gz`)
await pacote.tarball.file(getName(item.before), beforeFilePath, {
registry: getRegistry(item.before),
token: getToken(item.before)
})
console.info('before fetched', beforeFilePath)
await pacote.tarball.file(getName(item.after), afterFilePath, {
registry: getRegistry(item.after),
token: getToken(item.after)
})
console.info('after fetched', afterFilePath)
// require: https://github.com/lvc/pkgdiff
try {
const { stdout, stderr } = await execa('pkgdiff', [beforeFilePath, afterFilePath])
if (stderr) {
console.error(stderr)
}
console.log(stdout)
} catch (error) {
console.error(error.message)
}
}
}
main().catch(error => {
console.error(error)
process.exit(1)
});
このcheck.js
を実行すると移行前と移行後のパッケージをnpmと同じようにtarファイルとしてダウンロードし、
tarファイルの中身をPkgDiffで比較したレポートが取得できます。
PkgDiffのレポートでは、ファイルのDiffなども見られるので、結果を見て意図しない変更ないことを確認しました。
[ライブラリ利用側の移行の手順] GitHub Package Registryからインストールするためのnpmrc設定とコード修正
移行対象のライブラリがすべてGitHub Package Registryにpublishできたら、利用する側で.npmrc
の設定をして新しいパッケージを使うようにするだけです。
パッケージの中身が同一のものとして確認が取れていれば、具体的に利用側で行う変更は次の2つです。
.npmrc
の設定で@scope
が GitHub Package Registry を参照するように変更するrequire("xxx")
をrequire("@scope/xxxx")
に変更するgit+https:
で参照していたパッケージはscoped moduleになっていなかったためname
を変更した影響
.npmrc
の設定で @scope
が GitHub Package Registry を参照するように変更する
こちらはとても単純にread:packages
の権限のみを付加した共有のGitHubトークンを発行し.npmrc
に次のように記述するだけです。
.npmrc
:
//npm.pkg.github.com/:_authToken=<GITHUB_TOKEN_read:packagesの権限のみ>
@scope:registry="https://npm.pkg.github.com"
この.npmrc
を配置すると npm install @scope/foo
は自動的にGitHub Package Registryを参照するようになります。
📝 ここでは移行をスムーズに行うために共有トークンを利用しましたが、最終的に各自のGitHubアカウントに紐づくトークンを利用できるようにするのが理想的です。(リポジトリにGitHubトークンをコミットしなくて済む状態になるのが理想的です)
📝 npmrc設定後の細かいハマりどころ
パッケージのバージョンが同じままnpm private registryからGitHub Package Registryに変更すると、
EINTEGRITY
エラーでインストールが失敗します。
npm ERR! code EINTEGRITY
npm ERR! Verification failed while extracting @scope/name@1.0.0:
npm ERR! Verification failed while extracting @scope/name@1.0.0:
npm ERR! sha512-AaWB1bN1Gx+XXXXXXX== integrity checksum failed when using sha512: wanted sha512-AaWB1bN1GxYYYYYY== but got sha512-YYYYYYY==. (12345 bytes)
これはpackage-lock.json
のINTEGRITYチェックが正しく働いていて、
パッケージ名@バージョン
が同じなのに中身が異なるためチェックサムで失敗しています。
バージョンを更新するか同じバージョンとしてインストールし直すことでpackage-lock.json
を更新できます。
次のコマンドでpackage.json
に書かれたのと同じバージョンで@scope/name
をインストールし直すことができます。
インストールし直すとpackage-lock.json
が更新されるため、この問題を回避できます。
npm i -S -E @scope/name
require("xxx")
を require("@scope/xxxx")
に変更する
既にscoped moduleのパッケージ移行ならコードは変更する必要がありません。
ただし、元々のパッケージがscoped moduleじゃないもの(ここではgit+httpsで参照していたもの)は、コード側もrequire
やimport
先を変更する必要がありました。
単純に置換すればいいのですが、Node.jsのコードではrequire(moduleName)
のような変数を使ったrequire
も可能です。
そのため、単純な静的置換だともれてしまう場合があります。
ここでは2つの工程で抜け漏れを防ぎました。
- Dependency cruiserを使った静的なチェック
- Fakeパッケージを使った動的なチェック
Dependency cruiserを使った静的なチェック
静的なチェックならDependency cruiserを使うのが確実です。
Dependency cruiserでは次のようなルールを書けばrequire("pkgname")
しているコードを静的にチェックできます。
module.exports = {
forbidden: [
{
"name": "not-to-use-pkgname",
"comment": "don't allow to use pkgname",
"severity": "error",
"from": {},
"to": { "path": "^pkgname" }
}
]
}
静的なチェックだけだと漏れが存在する可能性もあるため、動的なチェックも含めることにしました。
Fakeパッケージを使った動的なチェック
動的なチェックとは require("pkgname")
のように pkgname
モジュールを読み込むと、
@scope/pkgname
モジュールを返すFakeパッケージを作る方法があります。
この方法なら require(nameVariable)
のような変数名での require
でも問題なく扱えます。
もし、require("pkgname")
を読み込んでいるコードが残っているなら、読み込んだ際にエラーログを吐くことで検知できます。
具体的にこのFakeパッケージの作り方には次の方法があります。
- 同じ名前でProxyモジュールを実際にpublishする
- Gitリポジトリを使ってパッケージを参照する
- npm 6.9のpacakge aliasを使って参照する
@scope/pkgname
をpkgname
としてインストールできる
ここでは require("pkgname")
した時点でエラーログを出したかったので、
一番手軽であとから消せる"Gitリポジトリを使ってパッケージを参照する"を利用しました。
手順としては、pkgname
パッケージのリポジトリにOrphanブランチを作成して、
次のように@scope/pkgname
をexportするだけのパッケージブランチを作成するだけです。
console.error(new Error("Use `@scope/pkgname` instead of `pkgname`");
module.exports = require("@scope/pkgname")
この例では、fake-pkgname
というブランチにFakeパッケージを配置したので、
利用者側のpackage.jsonでGitHubリポジトリのを指定してインストールするだけです。
"dependencies": {
"pkgname": "git+https://<GITHUB_TOKEN>:x-oauth-basic@github.com/scope/pkgname.git#fake-pkgname"
}
これで、仮にrequire("pkgname")
を行うコードが残っていてもエラーログが出力されます。
(実際にはもう少し多機能なロガーライブラリも併用していました)
KARTEではDatadogを使ってエラーログに対してアラートを設定しているので、
アラートが飛んでこなければ移行成功です。
移行完了
利用側の変更はパッケージごとに少しずつ進めましたが、GitHub Packages Registryへの移行は特に大きな問題なく移行が完了しました。
現在では社内のパッケージはすべてGitHub Packages Registryにpublishされた状態で開発されています。
あとはGitHub Packages Registryの使い方やFAQを社内のドキュメントに書いて、最初に作成したMeta Issueを閉じて移行作業は完了としました。
GitHub Packages RegistryはGitHub Actionsとの相性がいいので、npm private registryよりも使い勝手が良いです。
一方でnpm CLIが考慮してない状態になると意味不明なエラーとなるケースもあります。
その場合は、GitHub Packages Registryのドキュメントをよく読むのとGitHub Packages Registryはリポジトリに紐付いた存在ということを意識すると解決できます。
たとえば、GitHub Packages Registryにあるパッケージが404となるパターンとして、そのトークンのユーザーがそのリポジトリへのアクセス権限を持っていないというパターンがあります。これはGitHub Packages Registryがリポジトリに紐付いたものであるからです。
この辺の問題はnpmがGitHubに買収されたことにより解決されていくことを期待しています。
最後にGitHub Packages Registryへの移行に協力してもらったチームの皆さんに感謝します。